私と中国
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関西で広がる日中学生交流の輪
2022年11月4日
私と中国
作者:川端景司

 「中国ってご飯が脂っこいイメージです、体に気をつけて下さいね。」中国に留学に行くにあたり同僚に言われて第一声である。

 私は社会人生活八年を通し突然思い立ち杭州中国美術学院国画山水画班に留学を志した者である。元々は書道専攻の大学に通っており卒業してからもアマプロとして中国芸術に関心を持っていたのだが、とあることがきっかけで中国に留学して国画を勉強しに行く事を決意することとなる。それまでの自身の中国に対するイメージというと飯が脂っこい、空気がpm2・5で汚染されている、ニーハオトイレがある等だった。実際に中国に行ってからは空気的な問題は大して気にならず、飯の油っこさで言ったら日本の二郎系を超えるものはないだろう、ニーハオトイレは国の政策により徐々に改善されていっているらしい。

 中国に着くと、まず携帯電話がないとキャッシングができない為携帯電話を買いに行く事に、しかし店員には言葉が通じない為ひたすら筆談をするが埒が開かず、偶然熱心に日本語を勉強しているというお客さんが来店し通訳をしてくれる事に、無事携帯電話を買うことができた。大陸の人間は国土も広いが心も広いと言うことを実感した瞬間であった。その後図々しくも銀行手続きも一緒に着いてきてもらいライフラインが繋がったわけだ、タダでは相手に申し訳なかったのだが、交換条件に日本語の話し相手になってほしいと言われた、ここで一回限りの交流にならないところも何だか日本人とは違う嬉しいところである。その後もこの方とは定期的にお茶をする仲となった。

 因みに私が一年目所属していたのは杭州中国美術学院漢語研究生(入学要件を満たしていなかった)である。最初半年は初級中国語から勉強していき半年ほど経ってから専門の山水画を習いに行くこととなる。

 半年後事務所の勧めで国際教育学院山水画班に入学する事に、実は情けない事に中国人と中国語をよく話すようになるのはこのタイミングが初めてである。

 生徒は外国人中心の為英語が中心の授業ではあるものの中国人の先生が私の事情を把握していた為、簡単で聞き取りやすい中国語で画法をレクチャーしてくれる。「聞き取れなかったらわかりませんとすぐに言って下さい。あと何か必ず質問して下さい。君は聞き取れなくても頷く傾向がある上、発音に不安がある為あまり話さない。」と言われた為そのように心掛けたことがその後の留学生活で大きく影響することとなる。

 冬休みに入り、帰国後日本の篆刻教室の先生に日本に留学中の中国人女性を紹介される。彼女と語学の相互学習をすることとなり徐々に仲良くなっていく。中国に戻ってからもしばしば連絡を取り合ったり一緒に遊んだりもしていたのだが、今回作品として描いた華山はその中の一つの思い出である。私の専門が山水画であった為、是非登りに行きましょうとの彼女の計らいである。陝西省にある標高2000以上の高さで荷の葉脈のような岩山が特徴である。日本にはこれほど標高の高い岩山は無いため中国に来て本当に良かったと思った。

 中国に来たものの悲しいかな日本人一人では到底ここまで来ることはなかったと実感する。旅行中トラブルがあった際はいろいろ助けてもらった。旅行会社の人間とかにも相談してくれたり確認してもらったりと彼女には感謝しかない。多分一人で行ったら野宿する事になっていただろう…。下山後、彼女は春節のため洛陽に帰省、私は日本に帰る事になる。その後当時からニュースでは噂になっていたのだが後のコロナパンデミックが始まるわけである。

 今日に至るまで華山に行った時期から二年が経過している。コロナ禍の為中国に戻れなくなりオンライン授業を強いられる事になってしまった。この期間はとても苦しかったが今回華山の絵を描きあの頃の想いや中国での出来事を振り返ることができた。

 実は中国は私が外国に行った事のある唯一の場所である。実際に言葉を覚えて彼らと話してみると学問に対しては非常に誠実、性格は親切、特に人との繋がりを尊重する。正直話したり、現地の人と仲良くならないとわからないことがたくさんある。これは中国語を覚えることができて良かったと思う本当のところである。

 日本にはなかった価値観がここにはたくさん存在し、まだ卒業もしていないので自分自身はまだ何も成し遂げてはいないのだが、少しは変わることができたのでは無いだろうかと思う。日本にはなかった価値観がここにはたくさん存在し、まだ卒業もしていないので自分自身はまだ何も成し遂げてはいないのだが、少しは変わることができたのでは無いだろうかと思う。

 今後は中国の文化を日本人に一人でも多く伝えていき今後の日中関係の発達に少しでも貢献していければ良いと思っている。